(I)糸球体上皮細胞におけるaPKC基質の網羅的解析、 aPKCのキナーゼ活性による糸球体上皮細胞の変化をaPKCによりリン酸化される基質をプロテオミクス技術で網羅的に解析することで、aPKCの糸球体上皮細胞の形態維持メカニズムを明らかにすることを目標としている。本年度は培養細胞を用いた検討を行った。安定同位体を用いた培養下でaPKC阻害薬を反応させたものとさせないものを用意し、可溶化される蛋白質を回収する。このうち、リン酸化蛋白質を精製し、ペプチド消化し、2群間のタンパク質の量比をSILAC法により解析した。これにより複数の新規基質候補の同定に至っている。現在これらの基質候補が実際に糸球体上皮細胞においていかなる機能を持っているのか、蛋白尿発症メカニズムと関連する可能性について検討を続けている。 (II)PAR-aPKC複合体によるスリット膜複合体シグナルの制御機構の解析、 スリット膜の構造、およびその下流のシグナル伝達系に対してPAR-aPKCシステムが持つ役割について検討した。現在までにビオチンを用いた細胞膜発現量の解析によりPAR3あるいはaPKC活性を抑制することによりスリット膜蛋白質の膜局在が減少すること、すなわちPAR-aPKCシステムがスリット膜蛋白質の膜発現量を制御していることを明らかにした。今後この詳細なメカニズムの解析と、この機能の破綻が蛋白尿発症の原因になりうるかどうかについて解析を行う。
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