自閉性障害(ASD)および知的障害の病因遺伝子を同定し、病態を解明して治療法の開発に結びつけていくことを目的に、患者での染色体・遺伝子変異解析と、変異が検出されて病因と考えられた遺伝子の機能解析行った。 方法は、ASDおよび知的障害患者を対象に、Agilent社 Human CGHアレイ(180Kx4)を用いたアレーCGH解析による染色体微細欠失/重複(CNV)の同定、およびシークエンス法による候補遺伝子の変異解析を継続的に実施した。 その結果、CNV領域に局在する遺伝子として知的障害患者で欠失部位に局在していたLIN7AおよびASD患者で重複していた領域に局在していたLIN7Bが候補遺伝子と考えられた。LIN7Bに関しては、他の患者での変異解析により、スプライス変異を来す塩基変異を検出し、ASDとの関連は強いと考えられた。LIN7A/7Bは現在、機能解析継続実施中であるが、それぞれシナプス前、後膜で局在しており、神経細胞の発生・分化に伴って発現が増加する結果や、胎児期に発現抑制すると神経細胞移動、機能に影響を来す結果が得られている。これらの結果から、LIN7A/7Bは神経機能、シナプス機能に重要な役割を有すると考えられ、今後さらにASDの発症機序との関連を解析していく。 他に、CNVは複数検出されており、その領域に局在する遺伝子で、ASDの候補遺伝子と考えられる遺伝子に関し、関連性を解析中である。また、候補遺伝子解析としてセクレチン受容体遺伝子やSHANK2等のミスセンス変異が検出されており、これらの変異とASD発症の関連を解析している。
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