アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis ; AD)は、増悪・寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因をもつ。ADは多彩な遺伝要因と環境要因が複雑に絡み合って発症し、その症状が維持されていくと考えられている。環境要因に関しては、生後より摂取する母乳の関与が重要であると推測されてきたが、疫学的検討では母乳とADの関連性について一定の見解が得られていない。研究代表者は、in vitroにおける検討により、AD発症に寄与する母乳中の物質を同定し、その物質について、動物モデルで検証し、更には臨床介入を行うことによってADの発症予防に寄与することを目的とし以下の検討を行った。 今回研究代表者はAD患者の摂取した母乳のAD誘発物質の一つがcoenzymeA (CoA)であることを同定し、CoAはTh2アジュバント活性を有することが判明した。 現在確認されているプロスタグランジンE2等のTh2アジュバントはヒトとマウスで共通の活性を有している。今回母乳中のTh2アジュバントとして同定したCoAがin vivoの系でも同様の活性を有するかについての検討をAD自然発症マウスであるHR-1マウスを用いて行った。CoAをHR-1に経口で投与することにより、皮膚病理において慢性炎症を誘導することが可能であった。つまり、CoAはTh2アジュバント活性を有し、経口摂取することによりマウスモデルにおいてAD様病態を引き起こすと考えられた。
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