研究概要 |
マウス肺血管における各アイソタイプのイノシトール三リン酸受容体(IP3R)の発現様式の解析を試みた。2型IP3Rノックアウトマウスは、翻訳開始領域に続いてLacZ遺伝子を挿入しているため、LacZ染色で容易に内在性の2型IP3Rの発現を観察しうる。Whole-mountおよび切片LacZ染色法と血管内皮特異的マーカー(PECAM,Tie-2)を用いた免疫組織化学法との比較によって、2型IP3Rは、胎生後期および成獣の肺組織において、肺血管の内皮細胞に特異的に発現し、平滑筋には発現しないことを確認した。1型および3型IP3Rについては、免疫組織化学法を検討中である。 肺血管の内皮細胞および平滑筋細胞の培養系を確立するため、マウス肺より高純度の肺血管内皮細胞を分離することを試みた。まず、肺組織をコラゲナーゼ溶液とnon-enzymatic dissociation bufferに反応させ1細胞ずつに分離した。分離細胞集団から、血管内皮細胞表面マーカーであるPECAMに対するMagnetic beadsラベルした抗体で血管内皮細胞を分離したところ、多くの細胞が死滅したが、蛍光ラベル抗体を用いてFACSで分離したところ、純度および生存率の高い肺血管内皮細胞を分離することができた。ただし、胎生14日マウス胚の肺組織からは再現性よく分離が可能であったが、出生後の肺組織では細胞が脆弱で死細胞の割合が増加した。現在、成獣マウスからの安定した肺血管内皮細胞の分離法を検討している。さらに、PDGFRβなどの細胞表面マーカーに対する抗体を用い肺血管平滑筋細胞の分離を検討中である。
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