【背景・目的】これまで私達はSGAの認知予後として,認知の偏りと情緒機能の未熟性があることを報告した.今回, SGA性低身長と診断された児に成長ホルモン療法を開始し,その後の認知発達の検討を行ったので報告する.【方法】当院NICUを退院し就学前検診を受けたSGA83例を対象として,K-ABC心理教育アセスメントバッテリー(以下K-ABC),SDQを用いて認知および行動情緒機能を評価した.この対象児の中で,SGA性低身長と診断された14名の児に対し,ガイドラインに従い成長ホルモン療法を開始した.SGA性低身長に対するガイドラインに従い、成長ホルモン治療を開始した。(一週間に体重kgあたりソマトロピンとして0.23mgを6~7回に分けて皮下注射。)治療開始の際には児に対してプレパレーションを行い治療への理解を促した。治療前後で認知、行動、情緒機能の検査を発達専門医が行なう。発達スコアは、治療開始前後の数値を用いてANOVAにてt検定を行い統計学的有意差の検討を行なった.【結果】GH療法前後で,K-ABCにおいては総合指数、同時処理能力では有意な差が認められなかったが、継次処理尺度および習得度で治療後の数値が有意に高値であった。下位検査項目では、なぞなぞ、数唱のスコアが向上していたが、他の検査では有意な差は見られなかった。またSDQでは情緒,仲間関係にそれぞれ改善が認められた.回帰分析を行った結果、数唱スコアと習得度スコアで治療期間の有意な正の相関が見られた。一方で,SGAの不得意機能である同時処理尺度や多動性などには変化が見られなかった.【結論】SGA児に対するGH療法は、子どもの意欲や情緒機能に影響し、その結果高次脳機能発達の改善に寄与する可能性を有する.しかし他の交絡因子分析も加え、対象群を設定なども加え、更に長期的にフォローアップしていく必要性があると思われた。
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