研究概要 |
【研究の目的】ARBによる抗左心不全効果に関しては多くの報告があるが、先天性心疾患に多く認める右心不全に関する効果に関しての報告は少ない。肺動脈絞扼術モデルラットとモノクロタリン肺高血圧モデルラットの右心室に対するARB(Telmisartan)の効果を評価する。【方法】体重200gのSDラットに対して人工呼吸管理下に開胸術を施行し主肺動脈絞扼術を行い作成した肺動脈絞扼術モデル(PAB群、n=12)とモノクロタリン60mg/kgを投与し作成した肺高血圧群(MCT群、n=12)に対して、背部にOsmoticポンプを留置しTelmisartanを0.3mg/kg/日で4週間持続皮下注射を行った。4週後にmicrocatheterによる血行動態の評価を行った後に心臓を摘出,しReal time RT-PCRにてmRNAの測定と病理学的検討を行った。コントロールは各群に生食(NS)を投与したラットを使用した。 【結果】PAB群の右室圧は95.1±4.2mmHg,MCT群93.2±9.8で有意差は認めなかった。一回心拍出量はPAB群90.4±16.9ml/min PAB-NS群87.2±4.8,MCT群88.1±7.2,MCT-NS群61.1±9.1でMCT-NS群で有意な低下(P<0.01)を認めた。右室重量はPAB群で0.29g、PAB-NS群で0.31で有意差を認めなかったが、MCT群で0、35g、MCT-NS群で0.44gで有意差(P<0.01)を認めた。各右室より抽出したmRNAでpro-collagen 3、CTGFと右室%fibrosis、心筋面積はPAB群とPAB-NS群では有意差を認めなかったがMCT群はMCT-NS群と比較してすべてにおいて有意に抑制されていた。【考察】モノクロタリン肺高血圧モデルは心拍出量の低下があり右心不全を呈したがTelmisartan投与によって有意に線維化と心肥大が抑制された。肺動脈絞扼術モデルでは明らか効果は認めなかった。Telmisartanは右室直性な作用よりも肺血管への作用によって右室リモデリングを抑制していると考えられた。
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