研究概要 |
【研究の目的】ARBによる抗左心不全効果に関しては多くの報告があるが、先天性心疾患に多く認める右心不全に関する効果に関しての報告は少ない。肺動脈絞扼術モデルラットの右心室に対するARB(Telmisartan)の効果とその作用機序を明らかにする。【方法】体重200gのSDラットに対して人工呼吸管理下に開胸術を施行し主肺動脈絞扼術を行い作成した肺動脈絞扼術モデル(PAB群、n=30)にTelmisartanを1mg/kg/日、4週間,経口飲料水に混ぜて投与を行った。4週後にmicro catheterによる血行動態の評価を行った後に心臓を摘出しReal time RT-PCRにてmRNAの測定と病理学的検討を行った。コントロールは各群に生食(NS)を投与したラットを使用した。 【結果】PAB群の右室圧、一回心拍出量はPAB群90.4±16.9ml/minPAB-NS群87.2±4.8で有意差は認めなかった。右室重量はPAB群で0.29g、PAB-NS群で0.31で有意差を認めなかった。PV loopによる心機能解析でEes,EedはTelmisartan投与群で有意な改善を認めた。各右室より抽出したmRNAでpro-collagen3、CTGFはPAB群とPAB-NS群では有意差を認めなかったが%fibrosisは有意な抑制効果が認められた。Kaplan Meier生存曲線でTelmisartan投与群は有意な生存率の改善を認めた。また免疫組織染色、右室心筋においてPPARγはTelmisartan投与群において有意な上昇を認めた。【考察】TelmisartanはRNA levelでの線維化の抑制は認めなかったが病理学的に線維化を抑制した。また線維化の抑制にはPPARγの発現上昇が関与していると考えられた。心機能の改善はTelmisartanの抗線維化作用によるコンプライアンスの改善が寄与していると考えられた。
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