先天性胆汁酸代謝異常症(IEBAM)は、乳児期に胆汁うっ滞をきたし、無治療であれは肝硬変へ移行し死亡する予後不良な疾患であり、早期診断と治療が重要である。我々は、ガスクロマトグラフィー質量分析法による尿中胆汁酸分析とダイレクトシークエンス法による遺伝子解析を用いてIEBAMの診断を行っている。 今年度、新たに2例のIEBAMを遺伝子診断した。1例は、5β-reductase欠損症の女児で、診断後すぐに経口ケノデオキシコール酸療法を開始し、現在1歳で良好な経過を得ている。早期発見・治療により肝移植を回避できた。もう1例は、oxysterol 7α欠損症の女児で、肝移植後に診断がついた。本疾患は現在までのところ、肝移植以外に治療法はないといわれている。世界で2例の報告しかなく、今回が3例目である。本症例は、現在2歳で良好な経過をたどっている。世界で初めての移植救命例であるため、病態解明のためにも遺伝子診断とその後の経過観察が重要である。 IEBAMは早期診断し、経口ケノデオキシコール酸療法を開始すればそのほとんどが内科的治療可能な疾患である。非常に稀な疾患であり、確定診断には胆汁酸分析と遺伝子解析が必要なため、本疾患を小児科医に知ってもらう必要がある。特徴的な所見としては、乳児期に胆汁うっ滞を認めるにもかかわらず、血清γ-GTP及び総胆汁酸値が正常な点である。以上のことを、小児科及び小児肝臓病関連の学会や研究会で発表し、本疾患の理解の普及に努めた。また、本研究により診断がついたIEBAM症例の論文を日本語及び英語にて報告し、病態や治療法の解明を行った。
|