これまでの調査から明らかとなったPCDH19遺伝子異常でみられやすい症状をもつ女性患者や、表現型が類似する難治てんかんであるドラベ症候群とその辺縁群の女性患者を中心に収集した。平成22年度は新規に66例を解析し、病的変異を5例に同定した。これらの症例は、以前に同定した症例と同様、全例、乳児期から幼児期早期発症で、発熱感受性の強い群発発作を主症状とし、種々の程度の知的障害を合併し、これらはPCDH19遺伝子異常でみられる代表的症状と考えられた。さらに、臨床的スペクトラムを探索するため、これらの患者群とは別に、他研究で収集された精神遅滞症例のうちてんかんを合併する女児60例を解析した。このうち上記症例とは表現型を異にする1例に病的意義の不明な変異を認めた。これは保存性の高いアミノ酸残基に生じており、現在その病的意義を基礎的実験により検討している。さらに、シークエンス法で同定不可能な染色体微細欠失を持つ症例が海外から4例報告されているが、このような異常を同定するため、独自にプローブを設計しMLPA解析を開始した。現在131例を解析したが異常の同定された症例はなかった。現在、てんかんの責任遺伝子は種々明らかとなりつつあり、今後はその原因遺伝子からみたてんかん分類や、個々の分子病態に基づく治療法の開発が必要である。本研究では、本邦女性患者におけるPCDH19遺伝子変異の原因としての重要性や、さらにその表現型を明らかにし、今後のてんかん病型の診断的・遺伝学的意義の確立や、病態解明に向けた足がかりとするための重要な研究となる。
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