(1)PCDH19遺伝子解析:早期発症難治てんかんや発熱関連発作などをもつ女児症例、特にこれまでに明らかにした臨床的特徴(乳幼児期発症、発熱関連性発作、短い発作の群発、しばしば知的障害、自閉症や多動などの発達・行動異常、女性の特徴的家族歴などを認める)をもつものを中心症例として提示し収集し、新規に70例のシークエンスを行った。変異のない症例のうち実施可能であった42例に対しMLPA解析を行った。結果、遺伝子変異8例(1例ではエクソン2)、PCDH19全欠失2例を新規に同定し、前年までと併せ、本邦症例は20家系、24例となり、女性の早期発症てんかんの原因として、その重要性を確認できた。高解像度融解曲線分析は準備を進めたが、正確性と煩雑性を勘案し現時点で実施に至っていない。(2)臨床的特徴:新規症例においても乳幼児期発症、発熱との強い関連性、持続数分以内に終了する短い部分発作や全身性けいれんが高率に群発して出現していた。様々な程度の知的障害を8例に、自閉傾向を5例に認めた。調査年齢が若く長期予後判定は出来なかった。欠失例は本邦初であったが、点変異例との有意な臨床的相違は認めなかった。このように、本遺伝子異常による中心的臨床特徴がより明らかとなり、これらを参考に解析対象症例を選定することにより、より効率的に本遺伝子異常を同定することが可能となった。しかし、家族性症例では発作が数回のみで幼児期に消失する例や、有熱時発作や群発のない例も存在し、臨床的多様性が明らかであった。上記特徴の明確でない特に軽症例の存在は、実態把握の面で今後の課題である。(3)遺伝子型-表現型相関:海外からの報告も併せ、明らかな相関は認めなかった。同じ変異でも軽症と重症が混在する一卵性双生児例が存在し、その臨床的多様性は、他の遺伝的、環境的修飾因子に大きく依存することが推測された。
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