本研究では、小児自閉症の特徴である社会性行動障害と脳内における遺伝子発現調節機構のひとつであるヒストンへの修飾作用との関連について明らかにすることである。平成22年度は、小児自閉症のモデル動物の一つである胎生期VPA曝露により作成した自閉症モデルラットの生後発達期における脳内のヒストン修飾作用をin vivoで非侵襲的にイメージングするために、ポジトロンエミッショントモグラフィ(PET)によるイメージング法の確立に取り組んだ。ヒストン修飾作用のうちアセチル化に関与するヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)に着目し、PETプローブとして、HDAC阻害剤のsuberolyanilide hydroxamic acidの類縁体である^<18>F標識体である6-([F-18]-fluoroacetamide)-1-hexanoicanilide([F-18]FAHA)を合成することに成功した。また、[F-18]FAHA-PETにより、ラットの脳内におけるHDAC活性のPETイメージングを行い、in vivoでの脳内局在ならびに局所酵素活性の定量化に成功した。さらに、既存の様々なHDAC阻害剤の投与実験を行った結果、脳におけるHDACアイソザイムの部位特異性が明らかとなった。さらに、[F-18]FAHA-PETを行いマカクサルでも脳内でのHDACイメージングが可能であることを確認した。
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