研究課題
本研究では、可逆的な遺伝子発現調節機構のひとつであるヒストンへの修飾作用が社会性相互作用の障害との関連性を明らかにする。昨年度に引き続き、社会性相互作用が形成される生後発達期から成熟期に重点を置き、脳局所におけるヒストン修飾の変化を確認するために、ポジトロンエミッショントモグラフィ(PET)を用いたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)のin vivoイメージングを行った。PETプローブにはHDAC阻害剤であるSAHAの類縁体で6-([F-18]-fluoroacetamide)-1-hexanoicanilide([F-18]FAHA)を用いた。ラットを4つの発達段階(4、8、24、96週齢)に分けて幼若から老齢までの脳における[^<18>F]FAHAの取り込み量を観察した結果、[^<18>F]FAHAは成熟期である24週齢まで増加し、老齢期では成熟期に比較して減少した。脳局所の変化では線条体および視床での[^<18>F]FAHA取り込み量が小脳や延髄よりも高値であった。これらの脳部位における[^<18>F]FAHAの取り込みはradio-TLC法による代謝物解析からHDACとの反応であることを確認し、また、in vitroオートラジオグラフィ法により、HDAC1,2,3および6の選択的な阻害を確認した。これらのことから、[^<18>F]FAHAによるin vivoでの脳内HDAC活性を捉えることに成功し、発達に伴い局所で変化する可能性が示唆される。
2: おおむね順調に進展している
生後発達段階での脳内ヒストン修飾を非侵襲的に可視化することに成功し、成長に伴う脳局所変化をする確認することが出来たことは、今後のヒトの臨床研究に向けた基礎データと成り得たと考えられ、概ね順調に進展していると思われる。
今後も引き続き、社会性障害モデル動物を用いた生体イメージングを行い、死後脳を用いた組織学的研究との照合を進めて行く。
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