本研究では、神経芽腫関連遺伝子であるNLRR1がEGFやIGFによるシグナル伝達を増強し細胞増殖を増加させるメカニズムを明らかにし、それを標的とした新規治療法の開発を大きな目的としている。これまでに、NLRR1の機能には脂質ラフトの構造が必要であり、密度勾配法による解析によりNLRR1が細胞膜の脂質ラフト分画に存在することが示唆されていた。本年度では、GFP標識したNLRR1を細胞で発現させ、脂質ラフトマーカーである膜ガングリオシドGM1に結合するコレラトキシンサブユニットBを用いて解析を行った。その結果、NLRR1が脂質ラフトに局在することが視覚的にも確認された。また、NLRR1による他の受容体機能に及ぼす影響を検索した結果、bFGFやPDGFに対する増強効果は認められなかったことから、NLRR1は主な増殖シグナルであるEGFやIGFを選択的に制御することが示唆された。今後はNLRR1機能の責任領域を明らかにし、その部位に対するモノクローナル抗体を作製し、細胞増殖抑制効果を持つクローンのスクリーニングを試みる。 一方、これまでに作出したNLRR1ノックアウトマウスに関してはC57BL/6への戻し交配を行いつつ、その表現型解析を行った。その結果、NLRR1ノックアウトマウスは低体重であり、そのマウス胎仔線維芽細胞の増殖能は著しく減少していたことから、NLRR1の細胞増殖における機能が生体内においても確認されたと考えている。今後もさらなる詳細な表現型解析を行っていく予定である。
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