平成24年度では、前年度までのスクリーニングの結果得られた細胞増殖効果を抑制するNLRR1抗体の認識エピトープを同定するために、NLRR1の部分欠損型発現ベクターを用いて検討した結果、NLRR1の細胞外領域における抗体認識ドメインが明らかとなった。そのドメインを含むペプチドアレイを用いてさらなる検討を行った結果、NLRR1抗体の認識エピトープが明らかとなった。また、抗体の可変領域のうち相補性決定領域についてその遺伝子配列の決定も行い、NLRR1抗体の性状を明らかにした。細胞増殖抑制効果については、神経芽腫以外の細胞株を用いてさらなる検討を行った結果、乳癌由来細胞株、肺癌由来細胞株及び骨肉腫由来細胞株においても、増殖抑制効果が認められた。以上の結果をもとに、特許出願を行う。 一方、NLRR1ノックアウトマウスは低体重であり、神経細胞のみならずマウス胎仔線維芽細胞の増殖能も著しく減少することから、様々な器官・組織においてNLRR1欠損の影響を受けていることが考えられる。その表現型のため、前年度において成体における影響を検討するための個体数の確保が計画通り進まなかったが、平成24年度では個体数を増やすことができた。オスのノックアウトマウスのうち、野生型と同程度に成長を示した個体を用いて生殖能力を検討したところ、生殖能力に対してノックアウトが直接的に影響を及ぼさないことが示唆された。そこで、神経芽腫モデルであるN-mycトランスジェニックマウスとのコンパウンドKOマウスの作出を開始した。今後、NLRR1欠損が神経芽腫の発生に与える影響を検索する予定である。
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