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2011 年度 実績報告書

ハイスループット探索を用いた難治性神経芽腫のがん幹細胞標的療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 22791017
研究機関千葉県がんセンター(研究所)

研究代表者

竹信 尚典  千葉県がんセンター(研究所), 発がん研究グループ, 研究員 (60392247)

キーワード幹細胞 / 発がん / 分化
研究概要

神経および脳腫瘍の幹細胞マーカーであるCD133は、神経芽腫の幹細胞が濃縮される浮遊細胞塊(以下スフェア)培養において発現が誘導された。また、CD133を発現した神経芽腫細胞では、細胞の分化に関わる受容体分子RETの発現が、p38MAPKおよびAKTのシグナル活性化を介して抑えられることが明らかとなった。また、CD133を過剰発現するとスフェア内での細胞の生存率の上昇が見られ、CD133はがん幹細胞の維持重要な役割を持つことが示唆された。このことから、神経芽腫幹細胞においてCD133が発現誘導されており、その結果分化が抑制され、CD133は神経芽腫の悪性化に寄与していることが示唆された。この結果はOncogene誌に掲載された(Oncogene,2011,(30)97-105)。CD133の発現調節領域は5つ報告されており、それらのうち神経芽腫のスフェアで特異的に使用されている領域は、がん幹細胞の性質に重要であると考えられる。そこで神経芽腫スフェアで使用されている発現調節領域を明らかにするため、PCR法によって開始エクソンを解析した。その結果、神経芽腫のスフェアでは開始コドンの8kb上流に存在するプロモーターP1が特異的に使用され、転写が誘導されていることが明らかとなった。また、そのプロモーターP1領域に結合する転写因子の発現量をスフェア形成前後で比較したところ、スフェアのみで発現量の増加する転写因子を1つ同定した。その転写因子を神経芽腫細胞で過剰発現または発現抑制をおこなうことで、発現量に応じてスフェア形成が誘導されることから、転写因子はCD133の発現を介して神経芽腫の幹細胞性を制御していることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

23年度の実施計画であった、CD133の転写制御に重要なプロモーター領域の特定および、その領域を制御するCD133の転写を制御する因子の同定に成功した。また、その転写因子を発現または抑制することで、神経芽腫細胞の幹細胞性を制御することを明らかにできた。これらのことから、神経芽腫の幹細胞性を制御するメカニズムの一つを解明でき、23年度の目的をおおむね達成できたと考えられる。

今後の研究の推進方策

本研究で、23年度までに同定された転写因子は、エピジェネティックな制御を介してがん細胞の幹細胞性を制御しているものと考えられる。そこで、転写因子と発現量が一致するエピジェネティックな因子を探索するとともに、免疫沈降などを用いて結合の有無を確認する。また、がんの幹細胞性に関わるスフェア形成関連に重要な遺伝子は他にも存在することが予想されるため、より腫瘍に近い初代培養を用いて、スフェア特異的な遺伝子について網羅的解析を行なって行く予定である。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2011 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (9件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] CD133 suppresses neuroblastoma cell differentiation via signal pathway modification2011

    • 著者名/発表者名
      Takenobu H, Shimozato O, Nakamura T, Ochiai H, Yamaguchi Y, Ohira M, Nakagawara A, Kamijo T
    • 雑誌名

      Oncogene

      巻: 30 ページ: 97-105

    • DOI

      10.1038/onc.2010.383

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Bmi1 regulates cell fate via tumor suppressor WWOX repression in small-cell lung cancer cells2011

    • 著者名/発表者名
      Kimura M, Takenobu H, Akita N, Nakazawa A, Ochiai H, Shimozato O, Fujimura YI, Koseki H, Yoshino I, Kimura H, Nakagawara A, Kamijo T
    • 雑誌名

      Cancer Science

      巻: 102 ページ: 983-990

    • DOI

      10.1111/j.1349-7006.2011.01891.x

    • 査読あり
  • [学会発表] 神経芽腫/脳腫瘍スフェア特異的なCD133発現調節機構2011

    • 著者名/発表者名
      竹信尚典,下里修,秋田直洋,山口陽子,吉田早哉香,落合秀匡,大平美紀,中川原章,上條岳彦
    • 学会等名
      第53回日本小児血液・がん学会
    • 発表場所
      前橋
    • 年月日
      20111100
  • [学会発表] BMI1発現抑制による難治性神経芽腫の細胞死・分化誘導療法の開発2011

    • 著者名/発表者名
      秋田直洋, 竹信尚典, 落合秀匡, 永瀬浩喜, 中川原章, 上條岳彦
    • 学会等名
      第53回日本小児血液・がん学会
    • 発表場所
      前橋
    • 年月日
      20111100
  • [学会発表] CD133 plays roles in keeping the undifferentiated status of human colon cancer cells via PI3K/AKT activation2011

    • 著者名/発表者名
      竹信尚典,下里修,秋田直洋,山口陽子,吉田早哉香,中川原章,上條岳彦
    • 学会等名
      第70回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      20111000
  • [学会発表] DMAP1 works as a novel 1p tumor suppressor via ATM/p53 activation2011

    • 著者名/発表者名
      Yohko Yamaguchi, Hisanori Takenobu, Sayaka Yoshida, Miki Ohira, Atsushi Iwama, Akira Nakagawara, Takehiko Kamijo
    • 学会等名
      第70回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      20111000
  • [学会発表] BMI1 regulates neuroblastoma apoptotic cell death and differentiation2011

    • 著者名/発表者名
      Nobuhiro Akita, Hisanori Takenobu, Hiroki Nagase, Takehiko Kamijo
    • 学会等名
      第70回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      20111000
  • [学会発表] Acquired multi-drug resistance in human colon cancer cells by sphere formation2011

    • 著者名/発表者名
      Kumiko Nakashima, Osamu Shimozato, Hisanori Takenobu, Toshinori Ozaki, Akira Nakagawara, Takehiko Kamijo
    • 学会等名
      第70回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      20111000
  • [学会発表] MDM2 impairs NOXA transcription and affects apoptotic cell death in a p53/p73-dependent manner in neuroblastoma2011

    • 著者名/発表者名
      Yun Shi, Hisanori Takenobu, Kenji Kurata, Yohko Yamaguchi, Ken-ichi Koike, Akira Nakagawara, Takehiko Kamijo
    • 学会等名
      The 5 th International p63/p73 Workshop
    • 発表場所
      リヨン(フランス)
    • 年月日
      20110600
  • [学会発表] 幹細胞マーカーCD133は細胞内シグナル活性化を介して神経芽腫の増殖と分化を制御する2011

    • 著者名/発表者名
      竹信尚典,上條岳彦
    • 学会等名
      第116回小児血液腫瘍懇話会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20110500
  • [学会発表] Bmi1 regulates cell fate via tumor suppressor WWOX repression in small cell lung cancer cells2011

    • 著者名/発表者名
      Masaki Kimura, Hisanori Takenobu, Nobuhiro Akita, Osamu Shimozato, Hideki Kimura, Akira Nakagawara, Takehiko Kamijo
    • 学会等名
      AACR 102nd Annual Meeting 2011
    • 発表場所
      フロリダ(アメリカ)
    • 年月日
      20110400
  • [備考]

    • URL

      http://www.chiba-cc.jp/inst/jp/organization/005.html

  • [備考]

    • URL

      http://kamijo-labo.jp/

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公開日: 2013-06-26  

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