本年度の研究では、哺乳類細胞に変異Pタンパク質を強制発現し、ウイルス増殖へ与える影響を解析した。30アミノ酸ずつ一部欠損させたPタンパク質を作製し、麻疹ウイルス感染とともに細胞内に強制発現させたところ、大部分の変異体ではウイルス増殖に影響を与えなかったが、Pタンパク質のmultimerizationドメインの一部を欠損させた変異体では、ウイルス増殖が抑制された。昨年度の研究結果からPタンパク質N末端はLタンパク質との相互作用に重要でないと考えられたため、この変異体にN末端欠損変異を導入したところ、もとの変異体と同様にウイルス増殖を抑制した。このことから、Pタンパク質のmultimerizationドメインとC末端の配列を含むポリペプチドはウイルス増殖を抑制することが明らかになった。また、麻疹ウイルスと同じモルビリウイルス属に属するイヌジステンパーウイルスでは、麻疹ウイルスと同様にNectin4分子をウイルス受容体として利用できることがわかった。このウイルスは麻疹ウイルスとPタンパク質の相同性が高くmultimerizationドメイン配列が一致しており麻疹ウイルスと同様にこのドメインの一部を欠損したPタンパク質がウイルス抑制作用を持つと考えられた。
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