本研究の目的は、早産児の出血後水頭症(PHH)の分子病態を解明し、新たな治療法を開発することである。具体的に本研究で明らかにしようとしていることは、ヒト髄膜細胞を用いてHepatocyte growth factor (HGF)刺激によりMatrix metalloproteinase (MMP)-9産生が誘導されるかどうかを検討すること、HGFがMMP-9産生を誘導するのであれば、HGF刺激の細胞内シグナル伝達経路を特定することの2点である。 今年度我々は、本研究の意義をより明確にするため、PHH患児において、髄液中HGFおよびMMP-9が対照群に比べて有意に上昇し、かつPHH軽快群の方が非軽快群よりも有意に高値であること、さらにPHH患児においては髄液中HGFとMMP-9が有意な正の相関を示すことを証明し、PHH軽快の病態においてはHGF及びMMP-9が重要な役割を果たしており、かつHGFがMMP-9を誘導している可能性を論文にて発表した。そして、In vitroにおいてHGFがMMP-9を誘導する分子生物学的メカニズムを検討するため、まずヒト髄膜細胞がHGFの特異的レセプターであるc-Metを発現していることをRT-PCR法にて証明した。これにより、ヒト髄膜細胞はHGF刺激により何らかの蛋白発現を調節していることが示唆された。今後MMP-9がそのターゲットであるかどうかを、RT-PCR法を用いて検討する予定である。
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