研究概要 |
本研究の目的は、早産児の出血後水頭症の分子病態を解明し、新たな治療法を開発することである。具体的に本研究で明らかにしようとしていることは、ヒト髄膜細胞(HMC)を用いてHepatocyte growth factor(HGF)刺激によりMatrix metalloproteinase(MMP)-9産生が誘導されるかどうかを検討すること、HGFがMMP-9産生を誘導するのであれば、HGF刺激の細胞内シグナル伝達経路を特定することの2点である。我々は、前年度までにヒト髄膜細胞がHGFの特異的レセプターであるc-Metを発現していることをRT-PCR法にて証明している。 今年度我々は、HMCを様々な濃度(0-100ng/m1)のhuman recombinant HGFで刺激し、RT-PCRによりMMP-9 mRNA発現量の変化を調べたところ、濃度依存性にMMP-9発現量が増加することが判明した。同様の実験を3度行ったところ、同じ結果が得られ、その増加量は統計学的に有意なものであった。次に我々は、HGFの代表的な細胞内シグナル伝達経路であるERK,PI3Kそれぞれの特異的インヒビターで前処置したHMCと、前処置を行っていないHMCそれぞれをhuman recombinant HGF100ng/mlで刺激し、MMP-9 mRNA発現量の変化の有無をRT-PCRにて検討した。その結果、インヒビターの存在下ではHGFの作用によるMMP-9の発現量増加が抑制されることが判明した。これも同様の実験を3度行い、同じ結果が得られることを確認した。従って、HGF刺激によってヒト髄膜細胞のMMP-9産生は増加し、その細胞内シグナル伝達にはERKとPI3Kの経路が関与している可能性が考えられた。
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