研究概要 |
平成23年度はヒツジ胎仔を用いた慢性実験系を作成し(妊娠102日),子宮内炎症下(妊娠107日)で急性脱血を負荷する(妊娠108日)ことによって脳白質損傷を誘導した後,脳MRI撮影を実施する(妊娠112日)実験を計画した. その結果,6例中3例に脳白質損傷を誘導することができ(嚢胞性脳室周囲白質軟化 1例,巣状壊死 1例,皮質下多発小出血壊死 1例),6例すべてで出生1時間以内に脳MRIを撮影することができた. 免疫組織染色によってびまん性脳白質損傷の有無を確認し,これに巣状脳白質損傷も加えた「脳白質損傷マッピング」の作成は平成24年度の検体も合わせて一括して行う予定である. 脳MRI画像では皮質,白質,基底核,脳室の構造を明瞭に区別できたが,白質内の髄鞘化の程度については未だ言及できるレベルではなかった.この妊娠日齢では脳自体が3.0×4.0×2.0cm大と小さいため1.0teslaの磁場では解像度が足りない可能性があり,髄鞘化を検討するためには電子顕微鏡撮影による観察も必要かも知れない.したがって,将来的にはヒツジ胎仔の妊娠100-135日における髄鞘化の発達段階に合わせた髄鞘化の解析も必要になるだろう.巣状脳白質損傷に関しては,T1強調で低密度,T2強調で高密度の比較的明瞭な異常信号が観察されたが,びまん性脳白質損傷については未だ言及できるレベルではない. 実験はほぼ計画通りに進んでいるが,MRIの解像度を補える条件設定の工夫と電子顕微鏡撮影による観察が今後の課題として浮かび上がった.
|