ヒツジ胎仔を用いた慢性実験系を作製し,胎仔脳白質に誘導された虚血性病変をMRIで画像解析した.H23年度4例,H24年度4例で合計8例において胎仔脳MRIを撮影し,その異常信号と組織病理学的所見を比較することができた.ただし,H24年夏は類を見ない猛暑のためヒツジを予定どおり交配させることができず,8例中4例は予定していた「Sham」「炎症」「炎症+低酸素」負荷ではなく,「人工胎盤」を負荷された胎仔を用いてMRIを撮影した. 全8例中3例に脳白質損傷はなく,残る5例すべてに組織学的に巣状脳白質損傷 (PVL) が認められた.PVL 5例の内訳は,深部白質にPVLのみ2例,嚢胞形成PVL 1例,多発小出血壊死1例,脳実質内出血1例であった. MRI画像にて,組織学的に脳白質損傷が認められなかった3例すべてに側脳室周囲の深部白質で異常信号が認められ,それぞれ「T1巣状低信号」「T2びまん性高信号」「巣状T1高T2低信号」であった.一方,組織学的にPVLが認められた5例ではPVL病変ならびに多発小出血壊死に一致して「T1高T2低信号」が認められ,脳実質内出血では出血 部が「T1高T2低信号」でその周囲はその逆のコントラストであった. これから脳組織標本を標準的な冠状4断面で免疫染色し,巣状およびびまん性脳白質損傷の3次元マップを作成し,これとMRI画像を詳細に照らし合わせることによって,MRI異常信号の診断的意義を明らかにする作業に取りかかるところである.
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