研究概要 |
未熟児くる病の主要な病因は、カルシウムとリンの絶対的不足で、予防が重要であるが、明確な管理指標がない。線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor : FGF)23は、血中リンとビタミンD代謝を調節し、それにはKlothoが必要とされるが、新生児期の動態は不明であった。本研究の目的は、以下の3つ、1)正常新生児におけるFGF23とklothoの正常範囲決定、骨代謝関連検査項目および母体血測定値との相関関係の解析 2)早産児のFGF23とklothoの正常範囲決定、骨代謝関連検査項目との相関関係の解析 3)早産児のFGF23とklothoの経時的変化の解析、くる病の治療開始・終了基準の決定であるが、そのうち本年度の研究として正常新生児およびその母親の骨代謝関連検査項目を測定し、検討した。 正常新生児23名(うち双胎2組含む)とその母親21名を対象とし、母体血、新生児の臍帯血、日齢4で検査した。また、正常成人25名でも検査を行い、比較検討した。血清の可溶性α-Klotho濃度は、臍帯血で3,243±1,899pg/mlと、新生児(日齢4)582±90pg/ml、母768±261pg/ml、成人コントロール684±140pg/mlに比較して非常に高値(P<0.001)であったが、一方、FGF23は、臍帯血で有意に低値であった。また、臍帯血の可溶性α-Klotho値は、FGF23値と負の相関があった。さらに正常新生児胎盤の免疫組織化学染色では、合胞体細胞においてα-Klothoが多く発現していることがわかった。 胎児のカルシウムおよびリンの血中濃度は、その母より高値であり、能動輸送によるものとされるが、そのメカニズムはまだはっきりとわかっていなかったが、本研究の現段階で、胎児期のカルシウム、リン代謝にFGF23、Klothoが関与していることを初めて示すことができ、論文に掲載されることとなった。 今後、対象を早産児とし、胎児期に母親からのカルシウムやリンの能動輸送が十分でない状態でのFGF23、Klothoの測定を行い、未熟児くる病の病態を解明していく。
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