研究課題/領域番号 |
22791028
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
荒堀 仁美 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40379186)
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キーワード | Klotho / FGF23 / 新生児 / 骨代謝 / 未熟児くる病 |
研究概要 |
未熟児くる病はカルシウムとリンの絶対的不足によって発症する。出生後の予防が非常に重要であるが治療を開始・継続するための明確な指標がないことが問題となっている。 線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor : FGF)23は血中リンとビタミンD代謝を調節し、Klothoがその制御を行っていることから、血中Klothoの動態を知ることで未熟児くる病の発症予測および治療法の確立につながるのではないかと考え、研究を行っている。 前年度までの研究により、出生時の臍帯静脈血における可溶型α-Klotho濃度が非常に高く、健常成人コントロールに比して5倍近くまで上昇していることが分かった。今年度はこのサンプル数を増やし、母体における値との相関について検討を行った。その結果、出生時の臍帯血中の可溶型Klotho濃度は母親の分娩時の血中濃度の4倍以上、かつ同一新生児の生後4日目の血中濃度の5倍と有意に高値であることをさらに強く確認できた。 一方、未熟児くる病の発症と予防について検討するために、当院での早産児についての可溶型Klotho濃度を測定したところ、まだ症例数が少なく予備的データにすぎないものの、健常児に比較して低い値であることが分かった。またFGF23濃度は逆に高値であり、成人および健常児に見られた可溶型α-KlothoとFGF23濃度とのあいだの負の相関が早産児でも確認された。この結果が胎児特異的なミネラル代謝の原因であるのか、それとも結果に過ぎないのかについては、今後さらにサンプル数を増やし明らかにしていく必要がある。また早産児で見られたα-Klotho濃度の低下について、新生児の体重による影響があるのかを確かめるため、今後正期産・IUGR児のデータを集めて比較検討したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常児の臍帯静脈血における可溶型Klotho濃度の測定および母体血中濃度との比較については十分なサンプル数が確保でき、有意なデータを得ることができた。またこの結果について論文としてまとめることもできたため、おおむね順調な経過であると考えられる。 一方で、早産児における測定は、分娩数が限られるため、まだ十分な数が得られたとは思われない。しかしまだ途中経過ではあるが、α-Klotho濃度とFGF23濃度とのあいだの逆相関が認められ、この研究により有意義な結果が得られるのではないかと期待される。
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今後の研究の推進方策 |
まず健常児におけるαKlotho濃度の測定については、より確実なデータとするため、N数を増やしていきたい。つぎに早産児におけるαKlotho濃度と母体血中の濃度測定を進める。さらにFGF23濃度の測定も同時に行い、それらの相関を見る。 またこれらの値の変化が、ただ単に胎児の体重の少なさによるものなのか、それとも週数に基づくものなのかを見るため、FGR(fetal growth restriction;胎児発育不全)児の臍帯血についても測定を行いたい。さらにはミネラル代謝に関与する他の因子についても検討を行う予定である。
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