研究概要 |
未熟児くる病はカルシウムとリンの絶対的不足によって発症し、出生後の予防が非常に重要であるが治療を開始・継続するための明確な指標がない。リン利尿因子である線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor : FGF)23はリン恒常性維持機構において中心的役割を果たしていることが明らかになりつつあるが、そのFGF受容体と複合体を形成するKlothoはFGF23のシグナル伝達を制御している。そこで血中・髄液中に存在する可溶型Klothoの動態を知ることで、未熟児くる病の発症を予測するマーカーを確立することを目的として研究を行った。 新生児23例の臍帯血と日齢4での血清サンプル、その母体21例からの血清サンプル、正常成人25例の血清サンプルをもちいて、ELISA法によりFGF23と可溶型Klothoの濃度、血清Pi値の測定を行った。まずPiは既報通り臍帯血で高値であることを確認した。FGF23については、日齢4の新生児、妊婦、成人とで差がなく、それらの値に対して臍帯血では有意に低値であった。一方で可溶型Klothoの濃度に関しては、児血(日齢4)・妊婦・成人に比較して臍帯血において5倍以上の高値を示すことが分かった。臍帯血におけるFGF23と可溶型Klothoの相関を検討したところ有意な負の相関が認められた(R2=0.20, p<0.05)。さらに胎盤の免疫染色を行ったところ、合胞体栄養膜細胞におけるKlothoの発現が確認され、臍帯血中の可溶型Klothoは胎盤由来である可能性が示唆された。このように臍帯血においてFGF23値、Klotho値が特徴的な値を示したことは、胎児期に特有のリン恒常性維持機構が存在する可能性を示唆する。
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