研究課題
先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染の要因は妊婦におけるCMV初感染と考えられてきた。しかし実際には既感染の妊婦でも起こり、妊娠中に中和できないタイプのCMVに重感染することが原因である。既に我々の研究室では血清抗体価から感染しているCMV型を判別できるELISA法を開発していた。このELISA法によりCMV gBのAD2領域に対する抗体の有無が、腎移植後のCMV関連疾患発生に関わることが明らかとなり(Transplant Infectious Disease, 2010)、先天性CMV感染症においても検討予定である。ELISA法では先天性CMV感染におけるCMV型別の感染経歴をみることが出来た(第25回ヘルペスウイルス研究会)。血清学のみでは現在感染しているウイルスを解析するに不十分である。CMV型を判別できるリアルタイムPCR法を開発した(第58回日本ウイルス学会)。感染した新生児が実際に尿中に排泄しているCMVのDNA量を型別に検出・定量を行った。ELISA法による血清学の結果より、先天性CMV感染児16例中2例(12.5%)が重感染によるものと分かった。樹立したCMV型別リアルタイムPCR法により、重感染2例において、尿中に排泄されるCMV型は1種類であると分かった。以上により、血清学的には重感染であるが、実際に先天性CMV感染を引き起こしているCMVは片型であり、これが妊娠中に重感染した型であると考えられた。先天性CMV感染の80%は不顕性感染であるが、発症に至る感染と、不顕性に終わる感染とを見分ける危険因子は全く解っていない。本研究の継続により症例数の増加と症例ごとの経時的調査を加え、重感染例が顕性感染のリスクとなりうるのかを検討したい。
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Transplant Infectious Disease
巻: Aug 30