研究課題
先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染は妊娠中のCMV初感染によると考えられてきた。しかしCMV感染児はCMV既感染であった妊婦からも生まれており、中和できない型のCMVに重感染することが原因である。我々の研究室では既にCMV型特異的ELISA法を開発しており、AD169型とTowne型のCMVとして血清型を判別している。このELISA法により先天性CMV感染における母児血清中のCMV感染経歴を検討した結果、AD169型またはTowne型の片型CMVに感染している例が大半ななか、両型CMVに感染している例を見出した。また本研究ではCMV型を判別できるリアルタイムPCR法を開発した。AD169とTowneのCMV DNAを用い、両者が100倍未満のウイルス量比で混在している場合は少数側のCMV型も定量可能であることを確認した、実際にELISA法においてAD169型またはTowne型CMV抗体陽性と確認された感染児において、尿中CMV DNA量の型別検出・定量を行った。尿中に排泄されるCMV型は血清型と一致していた。更には血清中に両型CMV抗体を有する例では尿中CMV型は1種類であることが分かり、血清学的に重感染であっても体内で増殖しているCMVは片型である可能性が示唆された。血清型の異なるCMVの重感染を確認する方法(ELISA法・リアルタイムPCR法)を確立した。今後は先天性CMV感染例ごとの経時的調査を加え、片型感染例と重感染例、顕性感染例と不顕性感染例を比較し、顕性感染のリスクを引き続き検討したい。
2: おおむね順調に進展している
我々の研究室で開発した既存のELISA法を用い、先天性CMV感染児とその母親のCMV感染状態を検討出来るに至った。また数種類のプライマー・プローブ・反応条件を検討した結果、新たにCMV血清型別リアルタイムPCR法開発に成功し、CMV感染児に適用することが出来た。結果は学会・研究会・論文にて発表出来たため、研究はおおむね当初の計画通り順調に進展していると考えられる。
来年度(最終年度)ではCMV型別ELISA法とリアルタイムPCR法を健常成人・CMV感染児とその母親に適用し、CMV型別抗体価・ウイルス量が経時的にどのような変化をおこすのかなど、CMV感染児で認められる特徴を探索する。また既存のELISA法を改良したIgGサブタイプ別CMV抗体も検討中である。これらの結果を総括し、学会・研究会・論文等で報告する。現時点で研究計画の変更または研究を遂行する上での問題点は認められていない。
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