研究課題/領域番号 |
22791041
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
矢嶋 伊知朗 中部大学, 生命健康科学研究所, 研究員 (80469022)
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キーワード | 色素細胞学 / 循環器・高血圧 / 発生学 / 遺伝学 / 腫瘍学 |
研究概要 |
1)研究代表者は、前年度にメラノサイト系培養細胞株にてβ-catenin/TCF複合体がEp4rの発現量を増大させることを示した。本年度ではこのメカニズムをさらに詳細に解析するため、siRNAノックダウン法を用いたβ-catenin発現抑制実験を行った。その結果、β-catenin/TCF複合体を導入した場合とは逆に、Ep4rの発現が有意に抑制された。また、PDAモデルマウスのβ-cateninが安定的に存在するメラノサイトでのEp4rタンパク質の発現量を免疫組織学的解析にて調査したところ、高レベルのEp4rタンパク質の発現が観察された。これは、本モデルマウスのPDA発症がβ-catenin/Ep4rシグナルによって引き起こされていることを強く示唆している。2)平成22年度研究計画に基づき、新規PDA関連遺伝子コンディショナルノックアウトマウス作製を目指すべく、研究を行った。Endothelin receptor B(Ednrb)遺伝子はメラノサイトの発生、分化、増殖、生存といった広範囲の領域でメラノサイトと関連している。また、そのリガンドであるendothelin-1(ET1)はPDAとの関連性が古くから指摘されており、Ednrb遺伝子に着目した。コンディショナルノックアウトマウス作製用のEdnrbマウス(Ednrb-Floxed)と、メラノサイト特異的Cre発現トランスジェニックマウス(Tyr::Cre)を交配することにより、PDA発症に関わる新たなモデルマウスの作製を試みた。解析のため、Ednrb-Floxed alleleをホモに、Tyr::Cre alleleをヘテロに持つ新たなマウスTyr::Cre;Ednrb-Floxed/Floxedマウスを作成した。色素細胞特異的にEdnrbがノックアウトされているかどうかを確認するため、免疫組織学的解析にてEdnrbタンパク質の発現を調査したところ、メラノサイト系細胞のみでEdnrbタンパク質の発現が失われていた。このマウスを用いてPDAに関する解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的の1つは「β-cateninによるEp4rの制御に関して生化学小分子生物学的手法を用いて明らかにする」点であり、本年度の研究成果では昨年度の細胞レベルでの結果を本年度で更に詳細に明らかにすることができた。また、細胞レベルの事象が実際のPDAモデルマウスでも再現されることも示しており、おおむね順当に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者は既に、Ednrbを新たなPDAモデルマウスの候補の1つとしてマウスを導入し、解析を開始している。PDA発症に関する解析は、既にPDAモデルマウスとして我々が樹立したTyr::Cre;β-catFloxedEx3マウスを参考にすることで、大幅な時間短縮とより詳細な解析が期待できる。また、研究計画にあるマイクロ大セクション法を用いた解析も既に始まっており、ここから得られたRNAサンプルをDNAマイクロアレイ法にて解析することにより、個々の遺伝子を1つ1つ解析するよりも、より大規模で、正確なデータを短時間で解析する予定である。この解析法により、PDA発症に関与する数多くの遺伝子が同定されると期待できる。
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