研究課題
興奮毒性による神経細胞死の原因のひとつとして、酸化ストレスの関与が示唆されている。我々は以前、興奮毒性試薬を投与したラットの海馬において、酸化損傷タンパク質の指標のひとつであるカルボニル化タンパク質が増加することを解明し、興奮毒性による急性期の神経細胞死に酸化ストレスが関与する事を報告した。一方、急性脳障害後の重篤な後遺症の一つであるてんかん発作では、神経細胞の異常な興奮が繰り返し生じることから、てんかん焦点は慢性的な興奮毒性に曝されていると考えられる。本研究は、興奮毒性に起因する急性的および慢性的な脳損傷における酸化ストレスの役割を解明し、治療標的となる分子を提唱する事が目的である。昨年度は内側側頭葉てんかんで海馬硬化が認められる症例および神経学的症候が認められない剖検脳各2例を用いて、カルボニル化タンパク質の検出系を確立した。しかし海馬硬化症と剖検脳の比較では薬剤投与などの背景が異なるため、対照として用いる組織を再検討した。Watsonらの分類に従って海馬硬化の程度を評価し、Grade IVを5例、対照としてGrade O/Iを5例用いた。各症例から海馬硬化が認められるCA1領域と、組織学的に著変が認められない側頭葉新皮質を切り出し、2次元電気泳動とウェスタンブロット法によりカルボニル化タンパク質を検出した。タンパク質のカルボニル化量は、組織依存的な増加と病変依存的な増加が認められた。蛍光標識二次元ディファレンスゲル電気泳動を用いたタンパク質発現量解析についても、組織依存的な増加と病変依存的な増加が認められた。海馬のカルボニル化量を同一患者由来の側頭葉新皮質のカルボニル化量で補正し、対照であるGrade O/Iと比較して海馬硬化が認められるGrade IVの海馬組織のみで強くカルボニル化されるタンパク質の同定を進めている。海馬硬化組織のみで酸化傷害を受けるタンパク質を解明することは、治療戦略における標的分子の決定に有用であると考える。
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Neurobiology of Disease
巻: 43 ページ: 706-714
Neuropathology and Applied Neurobiology
巻: (印刷中)
10.1111/j.1365-2990.2011.01229.x