研究概要 |
海面状態は、湿疹皮膚炎群での特徴的病理組織像である。最近、私は、海面状態では、リンパ球により産生される、IFNγ,IL-4,IL-13が表皮角化細胞によるヒアルロン酸産生を増加させ細胞間浮腫が生じていることを明らかにした。一方、水分の細胞内外の移動には、アクアポリンと呼ばれる分子群が重要な役割を果たしていると考えられている。ダイナミックな水分移動の見られる海面状態では、アクアポリンが何らかの役割を果たしていると推測される。現在、接触皮膚炎の特徴的病理変化である海綿状態において、アクアポリン3(AQP3)がどのような役割を果たしているかは明らかにされていない。培養ヒト角化細胞(NHEK)を用いて、接触皮膚炎の病態形成に関与することが知られている種々のサイトカインによるAQP3の調節を検討した。昨年度は、NHEKのmRNAレベルでのAQP3発現の解析を行い、real-time PCRでTNFα処理によりAQP3のmRNA発現の低下を認めた。また、組織切片を用いた検討を行い、in situ hybridizationで海綿状態皮膚では健常皮膚に比べてAQP3の発現の低下を認めた。今年度は、細胞タンパクを用いたAQP3発現の検討を行った。NHEKを用いて、接触皮膚炎の病態形成に関与することが知られている種々めサイトカイン(TNFαを含む)によるAQP3の調節を検討したが、明らかな変化は認めなかった。また、接触性皮膚炎以外で表皮に変化を認める皮膚疾患(乾癬、類乾癬、天疱瘡)についても、同様に、組織の免疫染色を行いAQP3の発現を検討したところ、接触皮膚炎とは異なり、AQP3の発現低下は見られなかった。以上の結果より、接触皮膚炎局所に浸潤するリンパ球が分泌するTNFαが、AQP3発現を低下させることにより、海綿状態を形成している可能性が示唆された。
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