乳房外バジェット病はprivate partsに好発する皮膚悪性腫瘍の8%を占める癌であり、高齢者に多く切除困難な場合も多い。また抗がん剤や分子標的薬のin vitroでの抗腫瘍効果の判定がなされていない。いまだ腫瘍の発生母地や遺伝子プロファイルが明らかにされていないという事実があり、研究面で非常に立ち遅れた状況にある。当院で多くの症例を経験することもあり、将来的な治療に応用すべく、本症の遺伝子プロファイルと表面マーカーの同定さらには細胞株の樹立を行ない、データーの蓄積を行うことにした。初年度・次年度ともにまず手術検体を収集し、同症の性質や表面マーカ-、その増殖能、表皮への進展様式を調べるためcyclin D1、Mib-1染色をはじめとした免疫染色を開始し、微少浸潤病変と進行;期病変との違いについてその評価を行っている最中である。その過程で両者の鑑別に、パジェット細胞をCEA染色、リンパ管はD2-40染色、細胞核はヘキスト染色で染め分け蛍光顕微鏡で観察する手法を考案し、その有用性につき学会報告を行った。また、進行期でパジェット細胞がHER2レセプターを強発現した際のトラスツズマブ単剤療法の有効性についても学会・論文報告している。 今後は腫瘍組織標本からのレーザーマイクロダイジェクションの手技を利用し、取り出したmRNAからのcDNAの合成を行うとともに、マイクロアレイを利用し同症における遺伝子発現プロファイルを決定し、アポクリン腺組織との比較からその由来を考察する。またパジェット病細胞の表面マーカーとなるような膜タンパクや接着分子を発現する遺伝子を調べ、特異的な表面マーカーの同定を試みる。また手術標本から細胞懸濁液を用い、同定した表面表面マーカーを用いFACSにてソーティングを行ない、得られたパジェット細胞をIn vitroで継代培養し、細胞株を樹立していきたい。
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