研究課題
末梢組織からリンパ節へのリンパ管を介した物質の流れは、炎症性疾患やリンパ浮腫の病態に深く関わっており、また担癌状態における腫瘍抗原の提示や転移の経路の一つとして極めて重要である。これまでリンパ流の障害が炎症性疾患や創傷治癒、腫瘍免疫などにどのような影響を与えるのか、マウスを用いた研究はほとんどなされていなかった。カポジ肉腫ウイルス遺伝子をリンパ管内皮細胞特異的に発現したマウス(カポジ肉腫ウイルスサイクリン遺伝子導入マウス)はリンパ管が存在するもののリンパ流が障害されており、リンパ浮腫や胸水の貯留を来す。このマウスを用いて.創傷治癒、腫瘍免疫におけるリンパ流の役割について解析した。平成22年度において、まずマウス背部に作成した創傷治癒に対する肉眼的評価を行い、リンパ流に障害があるマウスのほうが創傷治癒が遅れることを見出した。これは臨床における経験に合致する所見である。また創部におけるサイトカインの発現を解析したところ、リンパ流に障害があるマウスにおいてIL-10の発現が亢進していることを見出した。IL-10ノックアウトマウスでは創傷治癒が促進することが報告されており、リンパ流の障害に伴って亢進したIL-10が創傷治癒の遅れに関与している可能性が示された。今後はリンパ流に障害があるマウスにおいて、IL-10の発現を抑制することによって創傷治癒が促進するか検討する予定である。これはリンパ浮腫に伴う下腿潰瘍の新たな治療法に結び付くと考えられる。また、マウス腹部に作成した腫瘍の大きさについて肉眼的評価を行い、リンパ流に障害があるマウスのほうが腫瘍形成が促進することを見出した。今後は組織学的評価や浸潤細胞の解析を行い、またリンパ節における抗腫瘍免疫の成立を検討する予定である。
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