研究課題
リンパ流の障害が創傷治癒や腫瘍免疫にどのような影響を与えるのか、これまでマウスを用いた研究はほとんどなされていない。カポジ肉腫ウイルス遺伝子をリンパ管内皮細施に館覗したマウスはリンパ管が存在するもののリンパ障が陣害されており、リンパ浮腫や胸水の貯留を来す。このマウスを用いて、創傷治癒、腫瘍免疫におけるリンパ流の役割について解析した。前年度までに、リンパ流に障害のあるマウスでは創傷治癒が遅延しており、肥満細胞の増加、組織球の減少、IL-10の免親の増加していることを確認していた。平成23年度において、IL-10ノックアウトマウスとリンパ流に障害のあるマウスを交配し、背部に作成した創傷の治癒を検討したところ、IL-10ノックアウトの背景では、リンパ流の障害の有無で創傷治癒に差がなかった。また、正常マウスの尾に人工的にリンパ浮腫を作成し、そこに創傷を作成したところ、リンパ流に障害のあるマウスと同様の所見を認めた。さらに、創部において肥満細胸がIL-10を発現することを免疫染色で示した。以上より、リンパ流に障害があると肥満細胞が増加し.肥満細胸が産生するIL-10によって組織球の遊走が阻害され、創傷治慮が遅延するという流れが判明した。これはリンパ浮腫に伴う下腿潰瘍の新たな治療法に結び付くと考えられる。腫瘍免疫に関しては、リンパ流に障害があるマウスのほうが腫瘍形成が促進することを確認していた。平成24年度において、腫瘍負荷したマウスのリンパ節を確認したところ、リンパ流に障害があるマウスではリンパ節への腫瘍の転移を認めず、リンパ節でのTNF-αやIFN-γの産生も、野生型マウスと比べて著しく低下していた。従って、リンパ流の障害によって腫瘍細胞がリンパ節へ流入しないことにより、リンパ節での抗腫瘍免疫が成立せず.皮膚での腫瘍形成が促進すると思われた。これは腫瘍免疲におけるリンパ流の役割を示唆する重要な知見と考えた。
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