抗CD20抗体を用いたB細胞除去療法は、B細胞由来悪性リンパ腫のみならず、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患に幅広く用いられている。しかし、全身性強皮症の代表的合併症である肺線維症に対する有用性は確立していない。B細胞は抗体産生以外に様々な機能を有していることが明らかになってきているが、なかでも炎症をコントロールする制御性B細胞の存在が明らかになった。しかし、線維化において制御性B細胞を含めたB細胞がどのような役割を果たしているかは明らかではない。本研究ではブレオマイシン誘発肺臓炎モデルを用いて肺線維化におけるR細胞の役割と抗CD20抗体療法の効果について検討した。抗CD20抗体を事前に投与してB細胞を除去したマウスにブレオマイシンを投与したところ、コントロール抗体を投与したマウスに比べ肺の線維化は増悪していた。一方、ブレオマイシンを投与した3日後の炎症期に抗CD20抗体を投与したマウスでは、コントロール抗体を投与したマウスに比べ肺の線維化は改善していた。また、遺伝的にB細胞を欠損したマウスにブレオマイシンを投与したところ、野生型マウスに比べ肺の線維化は増悪していたが、事前に野生型マウスの制御性B細胞を含むB細胞分画を移入することで、増悪した肺の線維化は野生型マウスと同程度まで軽減した。以上より、肺の線維化においてB細胞の役割には2面性があり、発症期と炎症期では異なっている可能性が示唆された。すなわち、発症期では主に制御性B細胞が炎症をコントロールしている可能性が考えられた。また、炎症期に抗CD20抗体を投与することで、線維化を抑制できる可能性があることが示唆された。
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