研究課題
我々はN-アセチルグルコサミン転移酵素-V(GnT-V)過剰発現マウス(GnT-V Tgマウス)を作成し、皮膚を中心に解析を行ったところ、GnT-V Tgマウスの表皮角化細胞の遊走能が亢進していることを見出した。表皮角化細胞は遊走時にepithelial-mesenchymal transition(EMT)様変化を起こすことが知られているために、我々は遊走能が亢進している理由として、EMTに着目した。GnT-V Tgマウス表皮角化細胞ではEMT時にその発現が低下するE-カドヘリンの発現低下がみられ、またEMT時に発現してくる転写因子であるSnailやTwistの上昇がみられた。さらに、間葉系のマーカーであるN-カドヘリンやαSMAの上昇がみられたことより、GnT-V Tgマウス表皮角化細胞は定常状態でEMT様変化をきたしていることが示唆された。さらに、EMT様変化を引き起こす原因として我々はEGFシグナルに着目した。GnT-Vにより糖鎖修飾を受けた細胞表面の成長因子受容体(EGFやTGFβレセプター)はGalectin3が結合することにより、細胞表面にとどまりやすことが知られている。EGFシグナルは表皮角化細胞において、EMTを誘導することが知られている。GnT-V Tgマウス表皮角化細胞のEGFレセプターは過剰に糖鎖修飾をうけており、EGFに対する反応性を下流のErkのリン酸化で検索したところ、リン酸化の亢進がみられた。さらに、亢進していた細胞遊走能はEGFレセプター阻害により回復した。最後にin vivoにおけるEMT様変化を検証するために、創傷治癒アッセイを行ったところ、GnT-V Tgマウスにおいて優位に創上皮の延長と創傷治癒の促進がみられた。以上の結果より、我々はGnT-Vを過剰発現したマウス皮膚においてEGFシグナルを解したEMT様変化がみられることを見出した。
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