研究概要 |
ヒトβデフェンシン(HBD)-3はヒトβデフェンシン-1~-4の中で、グラム陰性菌のみでなく、グラム陽性菌にも強力な抗菌活性を有し、しかもその抗菌活性は塩抵抗性である.我々は平成21年度までにHBD-3の非常に広域な抗菌活性とその塩抵抗性に,他のHBDには認められないC末端のアルギニン2残基,Arg42,Arg43が重要であることを示した.さらにHBDには末梢血リンパ球やケラチノサイトよりIL-6,IL-10,IP-10,MCP-1,MIP-3α,RANTESなどのサイトカイン/ケモカインが放出させる作用もあり、innate immunityとacquired immunityをリンクさせるものとしても注目を集めている。我々は,HBD-3のサイトカイン/ケモカイン誘導作用を決定づける領域を,当初,N末端のαヘリクスをその候補と考え,HBD-1,-2,-3それぞれのαヘリクス領域の抗菌活性ならびに培養ヒト表皮角化細胞のIL-6,IL-8産生刺激作用の有無を検討した.結果,これらαヘリクスはいずれも抗菌活性のみならず,IL-6,IL-8のRNA,蛋白いずれのレベルでの産生促進ないし抑制作用も有していなかった.続いて,我々は,抗菌作用に重要な役割を果たしたArg42,Arg43がIL-6,-8産生刺激作用にも関与している可能性を想定し,HBD-3(GIINTLQKYYCRVRGGRCAVLSCLPKEEQIGKCSTRGRKCCRRKK)よりR42,R43を除去した変異ペプチドであるdesR HBD-3(GIINTLQKYYCRVRGGRCAVLSCLPKEEQIGKCSTRGRKCC_KK)と,りR42,R43をN末端先端に移動したNRR HBD-3(RRGIINTLQKYYCRVRGGRCAVLSCLPKEEQIGKCSTRGRKCC_KK)を培養ヒト表皮角化細胞に加え,IL-6,-8のmRNA発現をreal time PCRにて,蛋白発現を培養上清のELISAにて測定した.その結果,desR HBD-3,NRR HBD-3はオリジナルのHBD-3と比べ,IL-6,-8などの分泌誘導が減弱していることを明らかとし,HBD-3の免疫調節作用をもR42,R43が大きく左右すること,ペプチドの総電荷のみならず,陽性荷電の局在によっても影響が及ぼされることを示した.
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