ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤はリンパ球系悪性腫瘍を含む多くの悪性腫瘍に効果が期待されているが、先行する諸外国の臨床経験や本邦での治験においても獲得耐性の出現が問題なっている。我々は獲得耐性のメカニズムを明らかにするために3株のリンパ球系悪性腫瘍の細胞株(Hut78、HH、Jurkat)にValproic Acid (VPA)を持続的に曝露することにより、VPAに対する耐性を獲得した亜株を樹立した。これらの細胞株はIC50値が親株と比べて2倍以上高く、また他のHDAC阻害剤であるVorinostatに関しても同じく耐性を獲得していた。いずれの獲得耐性株においてもVPAの刺激によるアポトーシスは有意に阻害されており、またいずれの細胞株においても耐性株においてG2/M分画が増加していた。microarrayを用いたmRNAレベルの網羅的な発現解析では耐性株群において共通して上昇もしくは低下している分子が195認められ、それらの中には細胞周期、アポトーシス、細胞増殖などに関わる分子の発現が含まれていた。タンパク質レベルでも蛍光標識2次元電気泳動を用いた網羅的な解析を進行中である。現在さらに2株の獲得耐性株を樹立しており、次年度はこの現象が普遍的な現象であるか確認をしたうえで、同定された分子およびそのネットワークを阻害することにより、獲得耐性が解除されるか検討を行う予定である。
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