研究課題
表皮ケラチノサイトに発現し、かつ乾癬の疾患感受性遺伝子であるcorneodesmosin (CDSN)遺伝子の生理的機能を明らかにする目的でCDSN欠損マウスを作製したところ、CDSN欠損マウスの表皮は角質ケラチイサイトの接着障害によって角質層が容易に剥離・脱落し、マウスは生後早期に死亡した。このことから、角質デスモゾームの構成分子CDSNが表皮の角化のプロセスを制御し、皮膚バリアー機能に必須の役割をもつことが初めて明らかとなった。さらに、CDSN欠損皮膚をヌードマウスの背部に移植してCDSN欠損皮膚の変化を長期に観察したところ、表皮の著明な肥厚、錯角化、表皮への炎症細胞浸潤といったヒトの乾癬に類似する病理組織所見を認めた。そこで、これらの病態プロセスに炎症性サイトカインがどのように関わっているかを明らかにする目的で、IL-22に対する中和抗体をCDSN欠損皮膚を移植したヌードマウスに投与し、その効果を病理学的た検討した。皮膚移植部の肉眼的観察では、IL-22中和抗体投与マウスとコントロール抗体投与マウスとの間で明らかな差異を認めなかった。すなわち、両群マウスともに移植皮膚部の膨隆と毛の脱落を認めた。続いて移植皮膚片を回収し、involucrin、loricrin、keratin 10(K10)等に対する抗体を用いた免疫組織染色によって皮膚の形成状態を評価したところ、IL-22中和抗体投与マウスにおいてはコントロール抗体投与マウスと比較し、明らかに表皮形成状態が良好であった。今後はIL-12/IL-23の共通構成要素であるp40に対する中和抗体との併用効果についても検討する予定である。
2: おおむね順調に進展している
timed-matingによる胎仔皮膚の回収とヌードマウスへの皮膚移植手術といった技術にも精通し、実験はおおむね予定通り進展している。
皮膚バリアー機能に関係する遺伝子の遺伝子改変マウスと交配することにより、CDSN欠損マウスにおける表皮形成障害のメカニズムを検討する必要がある。
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J. Immunol
巻: 186 ページ: 5047-5057
doi:10.4049/jimmunol.1003533
http://mms1.ier.tokushima-u.ac.jp/article/0017775.html