本研究では、アンドロゲンレセプターの感受性や発現量の調節機構の差異が、男性型脱毛症(androgenetic alopecia:以下AGA)の発症や性差、さらには発症後の進行速度の重大な決定要素ではないかと考え、女性のAGA患者の病態を解明することを目的としていた。 そこで女性のAGA患者の毛包におけるアンドロゲン作用を検討する予定も、女性のAGA患者のサンプル収集がはかどらなかったため、健常女性の頭部毛包におけるアンドロゲン作用の検討を行った。 正常頭部皮膚組織片より毛乳頭細胞の初代培養を施行し、継代4~6の培養細胞にてアンドロゲンレセプターのタンパク質をウエスタンブロッティング法にて確認し、アンドロゲンレセプターの細胞内イメージング解析を施行した。正常女性のアンドロゲンレセプターは男性と比較し極少量ながらもタンパクレベルにて全例で存在していた。しかし細胞内イメージング解析では男性ホルモンの刺激にてアンドロゲンレセプターの核内への移行は男性ホルモンに反応するタイプと全く反応しないタイプにわかれ、この割合は1:2の割合であった。毛乳頭細胞における細胞増殖実験では、男性ホルモンによる増殖抑制効果はなく、培養上澄みのTGF-β量の変化も見られなかった。 以上より、女性の頭部毛乳頭細胞はアンドロゲンレセプターを有しているものの、量が少なく、感受性も男性とはことなる結果となった。今後、AGAの家族歴の有無、頭部の部位別等にて統計解析し、論文化予定である。
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