研究概要 |
近年、毛包組織内の発毛に関わる細胞種として、毛包上皮幹細胞(Hair follicle epithelial stem cells ; EpSCs)が注目されている。EpSCsは毛乳頭以外の毛包組織を構築することができるため、毛包の完全再生が実現可能であると言えるが、いまだin vitroでの発毛(毛包組織再構築)は実現できていない。そこで、EpSCsを毛包再構築のソースにする「in vitro発毛システム」を開発し、特に発毛過程で最近注目されているWntシグナルに焦点を当てて解析を進めることを本研究の目的とした。 まず本年度は、in vitro発毛システムを実現するためのソース(細胞)の準備およびキャラクタリゼーションを行った。即ち、EpSCsおよび毛乳頭細胞(dermal papilla cells ; DPCs)を長期培養系の樹立、さらに各種Wntを強制発現させた細胞株の樹立を行った。EpSCsは、成体マウスの背部皮膚組織より単離し、さらにCD34,CD49fの染色後、ソーティングを行うことで単離した。また、DPCsは、マウス口髭より単離し、bFGFを加えた培養系により維持可能な系を確立した。In vitroの培養系で、EpSCsに対して種々のWntを付加した結果、Wnt-3aのみが未分化な状態を維持できる可能性が示唆された。また、Wnt-3aによって維持されたEpSCsはヌードマウスを用いた発毛誘導実験において毛包の新生を認めた。来年度、確立した培養EpSCsとDPCsをin vitroで共培養することで、in vitroにおいても毛包が再構築されるか否かの検証することで、in vitro発毛システムを開発し、さらにWntシグナルにより毛包構築が如何に変化するかを検討する。
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