本研究は、ケミカルピーリングをはじめ、外来抗原に対する一次刺激性、アレルギー性接触皮膚炎をモデルに、外来異物に対する皮膚反応におけるTransient receptor potential vanilloid1(TRPV1)の役割を明らかにし、その制御を目指すものである。まずマウス表皮細胞と皮膚樹状細胞におけるTRPV1の発現について、TRPV1欠失マウスを陰性コントロール、脳を陽性コントロールに、皮膚切片と表皮シートのRT-PCRと免疫染色によって検討した結果、TRPV1は表皮ランゲルハンス細胞でなく角化細胞に発現することを確認した。代表的なピーリング剤であるトリクロロ酢酸を外用した場合は、TRPV1陽性表皮角化細胞からの成長因子やサイトカインの産生を介して創傷治癒を促進し若返り効果を発揮することを明らかにし、論文にまとめた(李ほか、Eur J Dermatol再投稿中)。一方、DNCBと塩化ピクリルによるアレルギー性接触皮膚炎はいずれもTRPV1欠失によって増悪し、反復塗布によってさらに増強することを見出していたが、リンパ球移入実験によってこの違いが惹起相の反応の違いによることを明らかにした。TRPV1陽性末梢神経から放出される神経ペプチドであるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)に着目し、血中濃度の測定や皮膚切片の免疫染色にて解析を進めているが、CGRP欠失マウスではオキサゾロン誘発接触皮膚炎が減弱すること、CGRPは感作相において真皮樹状細胞の遊走を抑制することによってDNCB誘発接触皮膚炎を減弱させることが報告されていることから、POMC由来ペプチドなど、CGRP以外の因子の関与についても検討を始めている。
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