スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)や中毒性表皮壊死症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)は、マイコプラズマ肺炎(MP)感染症が先行する事が知られており、SJS/TENの発症原因と何らかの関連性が疑われているが、どのように関与しているのかは明らかでは無い。我々は重症薬疹である薬剤性過敏症症候群(Drug-induced Hypersensitivity Syndrome:DIHS)およびSJS/TENにおいて、免疫調節機能を司る制御性T細胞(Treg)の数的・機能的変調を見いだした。 前年度の成果から、MP感染症ではTregの細胞増殖に対する抑制機能が急性期および回復後3ヶ月~1年を経過しても抑制機能が持続的に低下しており、さらにTregのフェノタイプを調べると、CCR6^-のTregが優位に多い事が判った。そこで健常人のCCR6^+およびCCR6^-のTregの抑制機能を調べたところ、CCR6^-TregのfunctionがCCR6^+よりも低い事が判った。すならち、MP感染症のTregの機能が低下している理由は、CCR6^-Tregが増加している為と考えられた。 この機能低下しているCCR6^-Tregが実際に皮膚病変に存在するのかを証明するために、CCR6とFoxp3の免疫化学二重染色を行ったところ、MP感染症の病変部位にはCCR6^- Foxp3+Tregが存在し、対象疾患のVZV感染症である帯状疱疹の病変部位にはCCR6^+ Foxp3+Tregが存在することを確認した。これらの結果から、MP感染後は抑制機能が低いCCR6^- Tregの割合が増加しており、皮膚局所へホーミングするが、実際にはエフェクターT細胞の活性を押さえる事ができない環境に陥り、薬剤等のアレルギー反応が極めて起こりやすい状態になり、STS/TENを引き起こす可能性が示唆された。
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