本研究は水疱症と重症薬疹の治療として血漿交換を用いた際に免疫反応がどのような影響を受けるかについてサイトカインの反応を解析していくのが目的である。平成23年度の研究実績として、重症薬疹1名と天疱瘡3名の血漿交換前後でサイトカインを経時的に測定した。サイトカインの測定を行うにあたり、採血後の測定時間を一定とするため、水疱症の患者で採血の1時間と2時間後にそれぞれ血漿を分離し、分離操作がサイトカインレベルに与える影響を検討した。その結果、安定して結果が得られる採血後1時間で分離することとした。それぞれの疾患における測定結果は重症薬疹において、血漿交換前でTNF-αとIFN-γ、IL-10が健常人と比較し著明に上昇していた。血漿交換が著効した症例ではTNF-αは著明に低下する一方、IL-10のレベルは高値のまま変化しなかった。また、水疱症では血漿交換前のサイトカインと健常人を比較し、著明に上昇するサイトカインは無かった。血漿交換前後の比較では3例中2例でIL-10の上昇が見られ、その2例は症状が軽快している。それに対し、IL-10の上昇が見られなかった症例では血漿交換による軽快は得られなかった。しかし、2回目の血漿交換を行うことでIL-10が上昇し、症状の軽快が得られている。炎症性疾患である重症薬疹では血漿交換により炎症性サイトカインが除去されることにIL-10の持続高値が得られることが皮疹の軽快をもたらすものと考えられた。このように血漿交換後のIL-10のレベルが血漿交換で著効するか否かを決定している重要な要素と考えられた。今後はIL-10産生に至る細胞間相互作用を明らかにしていく予定である。一方、水疱症ではIL-10のみが上昇した。これは血漿交換がサイトカインの除去のみでなく、IL-10の上昇に影響し、病勢の改善につながっていると考えられる。
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