低酸素で働く転写因子HIF-1a及びHIF-2aの活性化型を作成し、2種類の悪性黒色腫細胞株に遺伝子導入した恒常発現株を作成した。これらはいずれもside population(SP)の顕著な増加、CD133のわずかな増加を示した。また、oct4 promoter領域を悪性黒色腫細胞株からクローニングし、oct4 promoter駆動性にGFP発光するレンチウイルスベクターを作成し、悪性黒色腫細胞株8株に導入した。これらのうち2株は低酸素下での培養によりGFPの発光が認められた。今後、これらの細胞株を免疫不全マウスに移植し、生体内での発光を追跡する。 また、SPに発現が高い新規の癌精巣抗原3種類のうち1種類のリコンビナント蛋白質を大腸菌で作成し、悪性黒色腫患者と健常人の血清中に抗体が存在するかどうかを検討した。この遺伝子には長さの異なる2種類の産物が存在したが、短い産物は患者と健常人両方に弱い抗体反応が見られ、長い産物は健常人で抗体反応が認められなかったのに対し、患者の1割程度に抗体が存在した。今後、検体数を増やして解析を進める。 さらに、癌精巣抗原3種類のうち2種類の抗原について、日本人に多く見られるHLA-A*24拘束性に提示されるエピトープ候補ペプチドを計5種類合成し、健常人ヒト末梢血単核球より、ペプチドをパルスした樹状細胞を用いてSPを効率よく障害できる細胞障害性T細胞(CTL)の誘導を試みた。T細胞を1週ごとに計4回刺激後に、抗原特異性についてELISpot法により検討したが、抗原特異的CTLの誘導に至らなかった。 今後、別の健常人ドナーより得た末梢血単核球を用いて抗原特異的CTLの誘導を試みる。
|