昨年度に続き、癌幹細胞様集団と考えられる、悪性黒色腫細胞株のSP分画に高発現する癌精巣抗原3種類のうちKU-MEL9抗原について、日本人に多く見られるHLA-A*2402拘束性に提示されるエピトープ候補ペプチドを合成し、健常人ヒト末梢血単核球より、ペプチドをパルスした樹状細胞を用いてSPを効率よく障害できる細胞障害性T細胞(CTL)の誘導を試みた。T細胞を1週ごとに計3回刺激後に、抗原特異性についてELISpot法により検討したところ、1種類の9merのペプチドを用いた系において、抗原特異的CTLを誘導することに成功した。このCTLは、癌抗原を内因性に発現するHLA-A*2402陽性メラノーマ患者由来癌細胞を特異的に認識することが細胞傷害試験において証明された。以上の結果は、同ペプチドを用いた癌幹細胞特異的免疫療法を開発する際の重要な基礎的データとなると考えられる。 また、癌微小環境と癌幹細胞の相互作用に関する解析においては、昨年度までにoct4 promoter駆動性にGFP発光するレンチウイルスベクターを導入し、in vitroでの低酸素培養によりGFPの発光が認められた悪性黒色腫細胞株について、今年度、side population(SP)を免疫不全マウスに移植し、形成された腫瘍からGFP陽性細胞をソーティングによる回収を試みたが、GFP陽性細胞を検出できなかった。そこで、oct4 promoterとGFP遺伝子の接続部分に変更を加えるとともにレンチウイルスのMOIを増加させたところ低酸素培養時のGFP発光効率を顕著に向上させることができた。また、悪性黒色腫のがん幹細胞集団をモニターできる可能性のある他のレポーターとしてJARIDIBとLgr5のpromoter駆動性にそれぞれGFPと異なる波長で発光するレンチウイルスベクターを作成し、oct4レポーターとともに感染させた悪性黒色腫細胞株を作成した。今後、これを免疫不全マウスに移植し、in vivoでの挙動を解析する。
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