研究概要 |
本研究は、1.Notchシグナルがマスト細胞の成熟や抗原提示細胞機能発現を誘導する分子的機序を解明するとともに、2.抗原提示細胞機能をもつマスト細胞のアレルギー性疾患発症および増悪における寄与を明らかにすることを目的としている。本年度は1の分子的機序について、主にマウス骨髄由来マスト細胞を用いた解析を行った。 マスト細胞は細胞表面に受容体であるNotch1とNotch2を発現しているが、Notch1を介したシグナルのみが抗原提示に最も重要な分子MHC class IIの発現を誘導することを明らかにした。MHC class II遺伝子の転写を直接制御するのはCIITAと呼ばれる転写因子であるため、次にNotchシグナルによるCIITA発現制御の機序を解析した。マウスCIITAには3つのアイソフォームが存在するが、Notchシグナルによってマスト細胞に発現が誘導されるのは、これまでリンパ球でのみ発現すると考えられていたタイプIII-CIITAであり、転写調節因子PU.1の働きが重要であることを示した。また、マウス脾臓中にMHC class II陽性マスト細胞が存在しており、このマスト細胞においてもタイプIII-CIITA発現が認められた。 マスト細胞の成熟に関しては、成熟したマスト細胞にのみ発現するプロテアーゼmMCP-1, -2, -4を指標に解析を行った。これまでマスト細胞の成熟はIL-10やTGF-βなどのサイトカインによって誘導されると考えられていたが、Notchシグナルはサイトカイン非依存的に成熟を誘導した。またこの成熟は、Notch1とNotch2のどちらを介したシグナルでも誘導されることを見いだした。 これらの研究結果により、マスト細胞におけるNotchの基本的な機能を明らかにすることができた。
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