接触皮膚炎のマウスモデルである接触過敏反応を用いた研究で、B細胞の中にサイトカインを介して皮膚免疫反応を制御する分画(制御性B細胞)が複数存在する可能性が明らかになってきている。我々はB細胞特異的に発現するCD22分子(B細胞シグナルを負に制御する抑制性共受容体)を欠損するマウスで、接触過敏反応が遷延することを見いだした。CD22欠損マウスでは既知の制御性B細胞分画の数、分布に問題がなく、新規の分画の存在が想定された。興味深いことに、この接触過敏反応の遷延は野生型腹腔内B-1a細胞の移入により正常化される。この正常化は抗IL-10受容体抗体の同時注射でブロックされ、IL-10を介していると考えられる。しかし、CD22欠損腹腔内B細胞のIL-10産生能には問題がない。そこで、色素標識をしたドナーの野生型/CD22欠損腹腔内B細胞を腹腔内投与し、レシピエントの接触過敏反応惹起後のリンパ組織における分布の推移を調べた。すると、CD22欠損腹腔内B細胞は惹起後5日後にリンパ組織への分布が少ないことが判明した。つまり、CD22欠損マウスの腹腔内B-1a細胞は本来や性型と同等のIL-10産生能を有しているにもかかわらず、リンパ組織での生存、保持、あるいはリンパ組織への移動が正常より劣るために、抑制作用を発揮できないという可能性が考えられた。以上より、腹腔内B-1s細胞は制御性B細胞の一端を成し、これのリンパ組織の分布に異常があるために接触過敏反応が遷延していると考えた。
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