昨年我々はCD22分子(B細胞シグナルを負に制御する分子)を欠損するマウスで、接触過敏反応が遷延すること、またこの遷延は野生型腹腔内B-1a細胞のIL-10を介した抑制作用により正常化されること、さらにCD22欠損マウスではこの腹腔内B-1s細胞のリンパ組織の分布に異常があることを見出していた。 CD19分子(B細胞シグナルを促進的に制御する分子)を欠損するマウスでも、接触過敏反応が増悪することが既に報告されていたので、2者の増悪の仕方を比較した。CD22欠損マウスでは急性期は野生型と同等の反応を示し、それ以降の回復の障害であるのに対し、CD19欠損マウスでは急性期より増悪が見られ、その後も遷延する。CD19欠損マウスでは、腹腔内B-1細胞数が著明に減少しており、CD19欠損マウスでも回復期の遷延が見られることに合致した。また、CD19欠損マウスに野生型腹腔内B-1a細胞を移入すると、反応の遷延は回避されるが急性期の反応については改善しなかった。このことは、急性期の異常な増悪を抑制する機序と、回復期の抑制機序は異なり、回復期の抑制機序のみがCD22欠損マウスでは障害されることを示唆している。これらより、接触過敏反応では、惹起相の反応はさらに急性期と回復期に分けることができ、おのおので異なる抑制機序が働いていること、そして腹腔内B-1a細胞はこのうち回復期で抑制作用を発揮していることが考えられた。 以上より、制御性B細胞には複数のサブセットが存在し、それぞれが異なるフェイズで作用することで反応の抑制や収束に関わっていると考えられた。
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