平成23年度までに52チャンネルのNIRS機器(ETG4000)を用いて計42名のPDD患者のデータを測定した。42名のPDD患者と年齢をマッチさせた健常対照群42名、統合失調症群42名とを比較した。認知賦活課題には語流暢性課題を用い、課題中の酸素化ヘモグロビン濃度の変化量の平均値を解析の対象とした。52チャンネルの測定値それぞれについて、3群間の一元配置分散分析を行った。多重比較の補正はBenjamini&Hochberg法(BH法)により行った。結果、チャンネル(Ch)1、Ch14、Ch25、Ch28、Ch29、Ch36、Ch46で3群.間の間に有意な差が見出された。Post-hoc解析(tukey法).の結果、Ch1、Ch29では健常対照群よりもPDD群と統合失調症群で有意に賦活が小さかった。Ch14、Ch25、Ch36、Ch46では健常対照群とPDD群で、統合失調症群よりも有意に賦活が大きかった。Ch28では健常対照群よりも統合失調症群で有意に賦活が小さかった。PDD群と統合失調症群で有意な差を認めたCh14、Ch25、Ch36、Ch46の測定値を独立変数として、PDD群と統合失調症群に関して判別分析を行ったところ、68.1%のケースを判別できた。Ch14、Ch25、Ch36、Ch46は右前頭前野(BA9/BA10).であり、統合失調症では異常が認められるが、PDD群では異常が認められないことが示唆された。また、この部位の脳機能の差異を用いてPDD群と統合失調症群を判別できる可能性が示唆された。 健常者での脳機能発達を近赤外線スペクトロスコピーを用いて検討し、"Developmental changes of prefrontal activation in humans:a near-infrared spectroscopy study of preschool children and adults"として、報告しPLoS One誌に掲載された。 また、PDDの病態を画像のみならず多方面から検討するために、PDDの大家系サンプルを対象にエクソンシーケンスを行い、PDDの前頭葉機能異常の基盤となる遺伝子の変異についての解析を行い、"自閉症スペクトラム障害家系の全エクソン解析"として第52回日本児童青年期精神医学会にて報告した。
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