本研究の目的は、(1)本邦の統合失調症患者1000名を対象にメタボリックシンドローム(MetS)の有病率を調査し、(2)Mets発症関連因子としての各種サイトカインの動態を調査して、さらに(3)各種MetS関連サイトカイン遺伝子多型、セロトニン・ドパミン受容体遺伝子多型を同定することである。これらの結果から将来的には薬剤投与前から個々の患者に合わせ、薬剤ごとに遣伝要因や臨床背景による肥満や糖・脂質代謝異常といった健康被害予測・予防が可能となり、統合失調症に限らず新規抗精神病薬が使用される他の精神疾患に対しても安全な薬物療法の確立につながる可能性がある。 研究期間終了時までに(1)・(2)に関して、新規抗精神病薬内服中の統合失調症患者811名、健常コントロール367名を対象とし、75gOGTT、耐糖能関連アディポカイン、脂質代謝の指標、プロラクチン等の血液生化学検査を行った。同時に体重・BMI、ウエスト径、血圧の身体計測データ、治療開始時からの薬剤治療歴、併用薬剤、精神症状評価の臨床データも収集した。加えてDNAの抽出を行い、アディポカイン関連遺伝子や食欲や体重増加への関連が示唆されているセロトニン・ドーパミン系など各種受容体遺伝子多型の解析を行った。H23年度には、 1.正常空腹時血糖値を示していても、新規抗精神病薬内服群では健常者と比ベアディポカインであるレプチンが増加し、同じくアディポネクチンは低下しており、耐糖能異常が生じる前の段階でこれらのアディポカインが変化している可能性がある。 2.新規抗精神病薬内服群では健常者と比べて糖負荷後により過剰なインスリンが分泌されている。 という結果を得、海外専門誌および国内学会にて発表した。
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