研究概要 |
fMRI研究:fMRIは,認知プロセスを研究する一般的な非侵襲的ニューロイメージングモダリティーとしての地位を確立しつつある.病状の変化や治療効果などの経時的変化の検討には高い試験・再試験信頼度が要求されるが,血流変化(BOLD activation)は,技術的(磁場の不均一性,体動),生理学的(呼吸,心拍の影響),心理的(覚醒水準,学習効果)要因の影響を受ける.従って我々は,まず本研究の目的を達成するための先行研究として,健常者における認知制御課題(Stroop課題)中のBOLD signalの再現性について検討した.結果,Stroop課題による前部帯状回と背外側前頭前野における脳賦活の再現性が確認され,fMRIが病状の進行や薬物療法の効果を検討する有用なバイオマーカーとなりうる可能性を示唆した. 脳波研究:我々はこれまでに統合失調症のドーパミン神経ネットワーク障害の解明を目的に,安静時脳波のエントロピー解析を行ってきた.当該年度では,統合失調症患者(10名)および健常者(9名)を対象に,アンフェタミンによるドーパミン神経活動の賦活による脳波変化をサンプルエントロピー解析(複雑性の指標)を用いて評価した.結果,健常者ではアンフェタミンの投与によりガンマオシレーションの複雑性が増加したのに対し,統合失調症患者ではアンフェタミン投与による複雑性の変化は乏しくむしろ低下する傾向がみられた.この結果は,脳機能と脳内ドーパミンレベル間にある逆U字型仮説に一致するものであり,サンプルエントロピー解析が統合失調症におけるドーパミンのガンマオシレーションに対する影響の検討において有用であることが示された.
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