研究概要 |
仮死モデルでクロザピンの効果をみるのに評価の対象とすべき表現型を決定するため、既に我々が仮死モデルで報告した海馬歯状回の顆粒細胞減少によるドーパミン神経系の応答亢進(Wakuda et al 2008)のほかに、仮死モデルの行動解析を行った。 Sprague-Dawley系雌性妊娠ラットを用い、妊娠最終日にエーテル麻酔下に開腹し,子宮ごと胎仔を取り出す。母親はそのまま深麻酔に導入し,屠殺する。双角子宮のうちの一方を,胎仔を含んだまま37℃に保った生理食塩水に浸し,15分の子宮内仮死状態を経験させたのち,子宮内より胎仔を取り出し蘇生させ,これを仮死(A)群とする。もう一方の子宮は速やかに帝王切開し,これを帝王切開(C)群とする。これら2群と同日に,別の母親ラットから自然分娩により生まれた仔を,経膣分娩(V)群とする。自発呼吸が得られ,自発運動が見られるようになるまで観察し,その後は代理母ラットに預けて飼育した。 出生から6週後,あるいは12週後の時点で,A,C,Vの3群の動物を以下の行動学的検討に供した。すなわち、オープンフィールドテスト(open field test)による社会的行動(social interactions)の評価、8方向放射状迷路による空間認知・学習の評価、PPI (prepulse inhibition)測定装置による驚愕反応の先行刺激による抑制の評価を行ったが、有意差が認められたものはなかった。そこで最終年度の計画として、仮死モデルのドーパミン神経系の応答亢進に的を絞り、クロザピンにこの異常所見を修復する能力があるかどうかを検証する。
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